幼児教育のプロが解説!考える力はなぜ必要?子どもの「考える力」をつける方法とポイント【コラム】

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(1)重要視される子どもの「考える力」

「考える力」が重要とされる理由。それは、変化の激しい現代社会を生きるにおいてなくてはならない能力とされているからです。国の方針も参考に、具体的に見ていきましょう。
 

1. 考える力とは

そもそも、「考える力」とはどのような力を指すのでしょうか。辞書で「考える」を引いてみましょう。「いろいろと思いめぐらす」「思考する」といった意味のほか、「判断する」「決心する」「工夫する」といった意味も見いだせるでしょう。つまり「考える」ということは、あらゆるものごとに対して「これはどうしてだろう」と問いかけ、「こうしてみよう」と工夫し、判断して実行するという一連の行動を指していると言えます。
17世紀のフランスの科学者・哲学者であるパスカルは、人間を「考える葦(あし)」である、と表現しました。「自ら問い、道を決め、実行する」。人間が人間らしくあるのはこの「考える」という力によるもの、ということなのでしょう。
 

2. 考える力はなぜ必要なのか

子どもたちの「考える力」の必要性は、近年特に叫ばれるようになってきました。文部科学省の「平成29・30・31年改訂学習指導要領」(※)においては、「新しい時代に必要となる資質・能力」のひとつとして「思考力」の育成を掲げています。理科・社会などあらゆる教科でただ知識を付けるのではなく、主体的に考えて判断し、表現できる力を伸ばしていくよう授業の転換を促しているのです。
それは、「これからの未来が予測困難」で、急激な変化の中でも子どもたちが生きていく力をつけ、「それぞれの幸せを実現するため」、としています。
以前のように就職したら定年まで、という終身雇用はなくなりつつあります。技術の進歩により単純な労働スキルはニーズが減少。刻々と移り変わる国際情勢の中で、必要とされるのは自ら考えられる人物。未来を担う子どもたちに「考える力」を身に付けさせるのは、国としても重要課題なのです。
※文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」参照
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
 

3. 入試でも求められている「考える力」

学習指導要領の変化とともに、中学・高校・大学の入学試験においても「思考力」を問う出題が目立ってきました。知識や公式を覚えていたら解ける、という単純なものではありません。
ある東京の中学校の入試の適性検査では、相反する2つの意見に対して自分はどう思うかを書かせる、という問題がありました。1つの正解があるのではなく、求められるのは持てる知識を結び合わせて独自の答えを導き出すこと。「日ごろからいかに考えているか」を試されているのです。
知識のインプットや計算問題とは異なり、「考える力」は勉強すれば伸びるものではありません。望みの学校で学ぶためにも、幼いころから「考える力」をつけていくことは大切なのです。

 
子供の考える力1
 
 

(2)子どもに「考える力」をつけるために親が心がけたい3つのポイント

ぜひわが子に「考える力」をつけたい、と思っても、実際にどうすればいいのか戸惑うかもしれません。大切なのは、子どもの「考える力」を「見守る」「認める」「展開させる」こと。この3つを心がけている親御さんは、日常の親子のコミュニケーションが自然と「考える力」を伸ばす土台となっています。それぞれ具体的に見ていきましょう。
 

1. 子どもの「考える力」を見守る

子どもの「考える力」は短時間で伸びるものではありません。親は子どもをよく観察してその話をよく聞いて、思考のきっかけをつぶさないように見守っていく必要があります。
 

疑問の芽を見逃さない

身の回りのあらゆるものに疑問を持つ子どもたち。「これはどうして〇〇なの?」という質問をたびたび投げかけてきますね。忙しいと、「さあ、どうしてかなあ」で終わってしまったり、「どうしても!」と強制終了したりしていませんか。
子どもが「どうして?」と思ったときは「考える力」の芽吹き。「チャンス!」と思って「いいところに気が付いたね」とまずは言ってあげましょう。「疑問を持つことはいいことなんだ」と子どもに認識してもらうのです。そして、「どうしてだと思う?」と考えることを促します。時間がないのであれば、「あとで考えてみようか」といったん保留して、忘れずにその疑問に向き合ってあげてくださいね。
 

先回りをしない

登園の身支度を親が丁寧にやってあげる、少し難しいゲームを「こうすればいいんだよ」とすぐ教えてあげる、ケガをさせたくないから少しでも高いところには登らせない…。子どもによかれと思ってしている親の「先回り」が、子どもの「考える力」を奪っていることがあります。
自分でできないことにぶつかったとき、どうすればそれを解決できるかと考えを巡らせるときこそ子どもは成長します。大きな危険は避けねばなりませんが、日常の失敗や軽いすり傷程度はいい経験に。自分の能力を知ることができ、失敗を恐れずに次はどうすればいいか判断することができるようになります。
 

すぐ答えず、考えている間は待つ

子どもが疑問を持ったときに、すぐ答えを教えてしまうのも考える機会の損失に。それを繰り返していると、「ママ・パパに聞いたらなんでもわかる」と自分で考えることが少なくなってしまいます。子どもが疑問を持ったときは、じっくり自分で考えさせてあげましょう。行き詰っているな、と思ったら初めて少しヒントを出すなど、教えたい気持ちをぐっと我慢して待ってあげることが肝要です。

 
子どもの考える力
 
 

2. 子どもの「考える力」を認める

考えてみても答えが出なかったり、答えが間違っていたり。そんなとき、子どもが自分なりに考えたことを親が認めてあげることで、「考える力」は一層育まれます。
 

答えに至る過程を大切にする

昨今の中学・高校・大学の入学試験においても、解答だけではなくそれに至る過程を評価する問題も出題されています。「正解」を出すことだけがゴールではなく、どのように考えたのかが重要なのです。
子どもの疑問も同じ。正しい答えがわからないことの方が多いかもしれませんが、正解を教える前にどう考えたのかを聞いてみましょう。「ここまで考えられたんだね。すごいね」と認めてあげることで、たとえ答えがわからなくても思考することをプラスに捉えることができます。
 
 

間違えても否定せず、答えの根拠を聞く

子どもの出した答えが正しくないこともたびたびあるでしょう。「それは間違い。正しいのは〇〇だよ」と教えるだけで終わってしまったらどうでしょうか。間違えるのがいやで考えるのをやめてしまったり、自信を失ったり…。マイナスに働いてしまうかもしれません。
まずは、「よく考えたね」とその考えたことを認め、どうしてそう思ったのかを聞いてみてください。すると、「その発想はなかったな」「そう捉えることもできるかも」と大人も驚く理由が出てくることもあります。正しいか間違っているかの二択ではなく、「自分はどう思うか」が大切、ということが理解できれば、周囲に左右されることのない自分軸を持つことができます。

 

3. 子どもの「考える力」を展開させる

子どもに芽吹いた「考える力」は、親の上手なリードがあれば自在に展開していきます。ちょっとした声かけや促しなど、親は積極的にサポートしていきましょう。
 

具体的な問いかけをする

「今日は幼稚園どうだった?」。このような漠然とした質問を子どもに投げかけていませんか。たいていの場合、「別に~」とか「楽しかった!」「忘れた」といった一言で終わりがちに。日常会話は「考える力」をつけるチャンスなのにもったいないですね。
「幼稚園はどうだった?」というあいまいな質問ではなく、なるべく具体的な質問をすることで子どもからたくさんの話を引き出すことができます。
「どんな遊びをしたの?」
「だるまさんが転んだ、をしたよ」
「そうなんだ!それ、どうやってやるの?」
「えっとね、先生が鬼でね、だるまさんが転んだ、っていう間だけ動いて、鬼が振り向いたら止まるの」
「そう。難しかったんじゃない?」
「片足でとまるのが難しいの!でもできたよ」
「それはすごいね!今度は〇〇ちゃんが鬼をやってみる?」
「ええ~、鬼はイヤだぁ」
「どうして?」
「だって緊張するもん」
…こんなふうに、なるべく子どもが答えやすいところから質問して、「どう感じたか」、「どうしてそう思ったのか」を考えられるようにしましょう。
 

親からも疑問を発信する

ときには、親が考えるきっかけを作ってあげるのもいいですね。子どもが関心を持ったことについて、「どうしてなんだろう」と問いかけてみましょう。
例えば、子どもがきれいな落ち葉を拾うのに夢中になっていたら、「これはどこから落ちてきたんだろうね」と言って木を当てっこしたり葉っぱの形の違いを観察したり。「夏は緑色だったのに、どうして色が変わったんだろうね」とその変化に注目したり。大人ならではのさまざまな視点で質問し、子どもの興味関心を広げていきましょう。
 

一緒に答えを探す

「疑問に対してすぐ答えない」ということと関連しますが、親も一緒になって調べたり、考えたりしてあげるのもおすすめです。親であっても、答えがわからないこともありますよね。たとえ答えを知っていても、「一緒に調べよう」と図鑑を見るなど子ども自身が答えを発見するのをアシストしてあげるのです。
子どもは初めから調べるツールや方法を知っているわけではありません。しかし、親が見本を見せることで、次第にひとりでも図鑑や辞書、インターネットで調べるなど、疑問を解決する術を身に付けることができるでしょう。
 

実体験ができる機会を作る

頭で思考するだけではなく、実際に体験することで「考える力」は格段に伸びていきます。
「どうして月は満ち欠けするのか」と疑問を抱いたことについて、本で調べれば太陽、月、地球とさまざまな天体の知識を得ることができます。そこで終わるのではなく、望遠鏡で月の表面や星空を観察したり、プラネタリウムに行ったりしてみたらどうでしょう。自分の目で見たその美しさや不思議は子どもの心を動かし、脳に大きな刺激を与えます。次に図鑑を見るときには違った目線で読み込むことができるようになるでしょうし、ニュースで宇宙のことを見聞きしたら、「ロケットや宇宙での生活について知りたい」など、さらなる思考が展開されていくでしょう。
子どもが興味を持ったこと、まだ知らないことにリアルに触れられる機会を、親は意識的に作っていきたいものです。

 
子どもの考える力
 

 

(3)まとめ

1. 「考える力」は一朝一夕には身につかない

以上、子どもに「考える力」をつけるために親が心がけたいことを紹介しました。中には、「うちの子は考えるのが苦手みたい…」という親御さんもいらっしゃるかもしれません。幼児や小学校低学年といった幼いうちは、考えていてもそれをうまく言葉で表現できないことも。しかし、上記のようなことを繰り返していけば、徐々に「考える力」は伸びていくはずです。親は焦らずに、子どもが本来持つ思考力を信じて寄り添っていくことが必要です。
 

2. これからの時代を生き抜くには「考える力」が大切

10年後、20年後は予測が困難である不透明な現代社会。どんな状況でも臨機応変に生き抜いていくためには「考える力」は欠かせません。ただ、語学やITスキルにありがちな「仕事のため」「他と差をつける武器」というとらえ方は間違っているでしょう。
さまざまなことに興味を持ち、問いかけ、その答えを試行錯誤して見つけること。自らの判断で道を切り開くこと。「考える力」は、子どもの歩む人生をきっとエキサイティングで楽しいものにしてくれるに違いありません。

 
 

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Writer:幼児教室はまキッズ灘中合格者数日本一の実績を持つ浜学園が運営する能力開発型の幼児教室。保護者同室・少人数制の授業で、高い思考力と社会性を養成します。対象学年は3歳~小2生。

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