【コラム】ギフテッド教育とは?特徴や事例とともに紹介します!

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小学生で相対性理論を理解する、何度か聞くだけで外国語を習得する、初めて触る楽器もすぐに弾けるようになる……。このようにずば抜けた才能を持つ子ども、「ギフテッド」が、社会の中には何%か存在します。アインシュタインや、フェイスブック創設者のマーク・ザッカーバーグなどもその一人。でも、「ごくまれな子」というわけではなく、日本でもクラスに1人の割合でいるともいわれているのです。
ギフテッドは幼いころからその特徴を見せ始めますが、真に才能が開花するためには、「一人ひとりの特性に合わせた教育」が必要不可欠。今回は、その「ギフテッド教育」にスポットを当てて解説していきます。
 

 

(1)ギフテッドとは

ギフテッドとはつまり、「神から特別な才能を与えられた(gifted)者」のこと。どういった特徴を持つ子どもを指すのか、改めて見ていきましょう。
 

1.ギフテッドの基準

特別な才能、といっても分野もレベルもさまざまで、どこからが「ギフテッド」なのかは一般では難しい判断です。日本では、ギフテッドの明確な基準は今のところ設けられていません。
ギフテッド教育が進んでいる欧米においては、おおよそ「IQ130以上」というのがギフテッドとされる基準値のようです。ただ、以下の「ギフテッドの特徴」にあるように、テストでは測れない分野で突出した才能を持つ子どももいるため、IQの高さだけが条件、というものではないことを覚えておきましょう。
 

2.ギフテッドの特徴とは

他とは一線を画す才能をもつギフテッド。具体的にどんな特徴が見られるのか、主なものをまとめました。
 
●「高い学習能力」…得意分野に関しては高い集中力で取り組むギフテッド。漢字や外国語、地名など何度も復習しなければ覚えられないようなことも、優れた記憶力で短期に習得することができます。高度な数学問題を幼いうちから説くことができるなど、ものごとの理解力が人一倍早い子どもも。

●「論理的思考・発言」…ものごとを深く、そして論理的に考える力があり、幼児期から大人のような言葉遣いで質問したり、自分の考えを述べたりすることも。

●「探求心が強い」…気になることはとことん質問して先生をびっくりさせたり、数学の問題を自分なりにさまざまな方法で解いてみたり、ものごとを突き詰めていく探求心が旺盛。
 
上記のように、ギフテッドには学習や専門分野の研究、仕事などでのちのち大きく役立つ才能があります。その一方で、日々の生活において困難を生じさせる特徴もあるのです。
 
 
●「苦手分野との差」…国語は大人顔負けのレベルなのに数学は全くできない、というように、得意不得意の差が激しく、苦手な分野で問題視されて苦労することも。

●「社会性の低さ」…ギフテッドのなかには、周囲とうまく協調できない子どもも。自身のこだわりが強すぎて孤立してしまうのです。

●「繊細で敏感」…繊細な感情を持ち、他者の言動にも敏感に反応して悩んだり、うちに引きこもってしまったりするギフテッドも。
 
このようなギフテッドの「生きづらさ」をもたらす特徴は、しばしばASD、ADHDといった発達障害と混同されます。実際に、そういった発達障害を併せ持つギフテッドの子どもも少なくありません。
判断は専門家にゆだねるしかないのですが、いずれにしても子どもの才能がつぶされることがないよう、慎重な診断と適切な教育が望まれるところです。


 

3.ギフテッドと優秀な子どもの違い

ギフテッドと聞くと、「とても優秀な子」というイメージを持つ人もいるかもしれませんね。ただ、一般的に「優秀」と呼ばれるような子どもとは、明らかな違いがあります。
いわゆる「優秀な子」とは、授業態度もよく、全体的な教科で成績がよく、友だちも大勢いて、先生のいうこともきちんと聞ける。そんな「万能選手」のイメージではないでしょうか。
一方、ギフテッドはというと、ある分野では桁外れの知能を持つ一方で、苦手分野は理解が進まないことも。理解が早すぎて授業がつまらなく感じ、「落ちこぼれ」ならぬ「浮きこぼれ」になってしまう場合もあります。また、自分の世界に集中するあまり、一般的に求められる社交性が身につきにくく、クラスメイトや先生とうまくやっていけないことも。
定型の「優秀な子」とは、学習への取り組み方も能力の発揮の仕方も異なるギフテッド。それゆえ周囲から理解されにくく、通常のクラスではなじむことができない子どもたちも少なくないのです。

そんな子どもたちのために考え出されたのが、「ギフテッド教育」です。いったいどんな教育方法なのか、その歴史も含めて紹介します。
 

(2)ギフテッド教育とは

際立つ特性を持つギフテッド。彼らのストレスを軽減し、その能力を思い切り伸ばせるように設定されたのが、「ギフテッド教育」です。
 

1.ギフテッド教育とはどのようなもの?

欧米において、ギフテッド教育は「GATE(Gifted and Talented Education)」などと呼ばれています。
具体的には、特別クラスで通常より難易度の高い内容の学習を受ける、短期の特別セミナーに参加できる、飛び級で進級できる、などがあり、詳細は次章で紹介します。
これらのギフテッド教育を受けるためには、選定試験を受ける必要があります。アメリカでは、学力、知能(IQ)のレベルを測るための試験のほか、親や担当教員の意見も含めて最終決定されることが多いそう。
 

2.ギフテッド教育が必要な理由

先述したように、ギフテッドの中には授業の内容が簡単すぎると感じたり、周囲とのコミュニケーションが取りづらかったり、学習の発達の凸凹が大きかったりする子どももいます。
そのまま同じ環境においた場合、学校を楽しくないと感じ、苦手分野だけではなく全体の学習意欲が下がり、せっかくの才能が開花しないまま埋もれることも。それどころか不登校やうつといったことにつながる場合もあります。
画一的な教育スタイルの中では、担任教員が一人だけ特別な学習内容を用意するといったケアは難しく、手に余ってしまうケースも。
「すべての子どもが過ごしやすい学校」というと、日本では障害児の支援学級が主な対策ですが、ケタ外れの能力を持つギフテッドにも、その才能を伸ばしつつ苦手分野をサポートする適切なケアが必要とされているのです。
 

3.ギフテッド教育の歴史

GATE先進国であるアメリカにおいては、19世紀中ごろにはギフテッドのための教育への取り組みが始まりました。「通常6年間で学ぶカリキュラムを、4年間に短縮して修めてもよい」といったもので、20世紀初頭までに多くの州に何らかのギフテッド教育が広がりました。
20世紀半ばには「全米ギフテッド協会(National Association for Gifted Children)」といった活動団体が設立されました。ロシアとの冷戦下ということもあり、国益のためにも優秀な才能を持った子どもたちを積極的に育成していくという目的があったようです。
このように、早くからギフテッド教育に取り組んできたアメリカですが、「GATEが受けられるのが富裕層に偏っている」など問題もあり、近年ではその内容の見直しも行われているようです。
ヨーロッパ諸国やシンガポールなど、今ではさまざまな国で独自のギフテッド教育が行われており、日本でもやっと、2023年より「得意な才能ある児童生徒支援」に国として取り組むこととなりました。


 

(3)海外におけるギフテッド教育

日本よりもギフテッド教育が進んでいる海外の事例を、アメリカを中心に見ていきましょう。
 

1.アメリカでのギフテッド教育の事例

早くからギフテッド教育に取り組んでいるアメリカ。その中から、主な方式を4つピックアップしました。
 

プルアウト方式・取り出し方式

一般のクラスで学びながらも、一定時間はギフテッドの子どもたちのための特別クラス、もしくは学校で過ごします。特別クラスでは、より難易度の高い授業を受けることや、興味に合わせたプロジェクトに取り組むことができます。
 

エンリッチメント方式

終日一般のクラスで学びますが、ギフテッドの子どもに対してはレベルの高い問題が用意されるほか、数学コンテストなどへの参加といった、能力を発揮できる機会が与えられます。
 

アクセルレイト方式

能力に合わせて、就学年齢に達していなくても小学校に入学できたり、上の学年・学校に進むことができたりといった、「飛び級」「飛び入学」が認められます。
 

サマースクール方式

夏休み期間に、ギフテッドを対象としたサマークスール、サマーキャンプが全米各地で開催されています。小学生対象で中学校の数学の内容を教えるなど、意欲が旺盛なギフテッドが存分に学べる場です。試験によって参加資格が得られます。


 

2.その他の国での事例

イギリスにおいてはギフテッドは学校で登録されていて、その特性に合わせて学習を受けられているか確認できるようになっています。私立校を中心に奨学金などギフテッドへのサポートが行われているほか、学校になじめない子どもにおいては、専門家のアドバイスを受けつつ家で学ぶホームスクールも広まってきています。
ドイツでは、アメリカと同じようにギフテッドのための特別クラスやいくつかのスクールが設けられているよう。飛び級も認められているそうです。
アジアの教育大国であるシンガポールでは、小学3年生で全員が「Gifted Education Programme(GEP)」という選抜プログラムを受験。上位数パーセントの子どもたちは、ギフテッド向けの教育が行われている小学校への転校が可能です。
上記に挙げたのは一部ですが、世界全体の傾向としては、「ギフテッドだけを集めて教育する」という状況から、「通常学級で過ごす中でさまざまな子どもたちどともに生きることを学びつつ、ギフテッドの特性もケアしていく」、という方向へと変わっていきつつあるようです。
 

(4)日本におけるギフテッド教育

我が国はギフテッド教育においては後進国であり、特異な能力がある子どもたちはときに、学校で扱いにくい子、とされてきました。そんな中、ギフテッドの子どもを持つ親を中心に、海外のような子どもに適した学びの場を求める声が大きくなり、独自にギフテッド教育に取り組む教育機関・団体も現れました。
 

1.日本でのギフテッド教育の取り組み事例

渋谷区では「渋谷区ラーニング・リソースセンター」を設立。東京大学先端科学技術研究センター・人間支援工学分野がプログラムを担当し、区内の公立小学校4年生~公立中学校3年生を対象に、知識・スキルを実体験から学ぶ体験型授業や、読み書きが苦手な子どものためのICTを使いこなすレッスンなどを実施しました。
ギフテッドのための取り組みを行っている私立学校もあり、東京・長野に学び舎のある「翔和学園」では、専門クラスを設置。苦手な分野をケアして基本的なことが理解できるようにするとともに、学年や学科を横断したカリキュラム、興味を突き詰めていくプロジェクトなどを取り入れています。
ソフトバンクグループの代表取締役である孫正義さんが作った「孫正義育英財団」も、ギフテッドを支援する団体の一つ。審査をクリアして能力が認められると経済的な支援を受けることができます。それを活用して海外で専門分野を学ぶといった財団生も。
 

2.日本におけるギフテッド教育の課題

個々に取り組みが立ち上がってきた日本ですが、ギフテッドを支援する団体からの提言もあり、先述したとおり2023年からは国として「得意な才能ある児童生徒支援」が実施されることとなりました。
内容としては、「特異な才能のある児童生徒に関する研修パッケージの作成」「特異な才能のある児童生徒の特性を把握するツールや特異な才能のある児童生徒の支援に資するプログラム等のデータ収集・整理」「特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援に関する実証研究」「特異な才能のある児童生徒の指導・支援を行う教職員・保護者を対象とする相談支援に関する実証研究」に取り組んでいくとのこと。※
とはいえ、すぐに全国の学校に施策として組み込まれるわけではなく、小中高校、大学間をはじめ教育機関以外との連携もこれからの段階。ギフテッドの子を育てる親が相談できる機関の充実など、具体的な取り組みが待たれます。

※文部科学省「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業について」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/169/mext_00006.html
 

(5)まとめ

子どもは一人ひとり違った能力を秘めています。それは、放っておいても花開く、というものではありません。周囲が適切な学びの場を用意することが大切なのです。
学習だけではなく、スポーツやアートなど、誰もが自分の「好き」を伸ばしていける社会、苦手なことも補い合える社会。ギフテッド教育を考えることは、そんな理想の社会への模索ともいえるでしょう。
 

 

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Writer:幼児教室はまキッズ灘中合格者数日本一の実績を持つ浜学園が運営する能力開発型の幼児教室。保護者同室・少人数制の授業で、高い思考力と社会性を養成します。対象学年は3歳~小2生。

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