【コラム】3歳の行動や気持ちの切り替えが苦手な理由は?対処法についても解説
子どもが遊んでいるときに、「ご飯だよ」「そろそろ帰ろうか」など声をかけると、「イヤだ!」とぐずってしまう。特に3歳ごろまでは、まだ気持ちの切り替えが難しく、さっと次の行動に移れないこともよくあります。
「まだ小さいから仕方ない」とも言えますが、就学後は時間に合わせて行動していくことが必要に。今から少しずつ自分で切り替えられるように、親がサポートしてあげるといいでしょう。
この記事では3歳前後の子どもが気持ちの切り替えが苦手な理由とその対処法について詳しく解説します。接し方や声掛けを変えることで、子どもがスムーズに次の行動に移れるようにしてあげましょう。
(1)【3歳】知っておきたい3歳の発達段階
1.第一反抗期
2.ものごとへの好奇心が旺盛に
(2)【3歳】切り替えが苦手な理由
1.目の前のことに夢中になり、先を考えられない
2.気持ちの表現、コントロールが未熟
3.やりたくないことへの拒否
4.急な場面展開が苦手
5.発達に問題がある場合も
(3)【3歳】切り替えが苦手な子どもへ周囲の大人ができること
1.スケジュールを立てる
2.あらかじめ切り替えやすい状態にしておく
3.予告の声掛けをする
4.切り替えのタイミングやその先が見える工夫をする
5.子どもの視点になり、共感してから伝える
6.クールダウンの時間をとる
7.切り替えができたときは思い切り褒める
(4)切り替えが苦手な3歳児への言葉がけ5選
1.1. 時計の長い針が○になったら
2.2. あと○回したら終わろうね
3.3. 一緒に片付けよう
4.4. もっと遊びたいんだね
5.5. 自分で終われたね
(5)まとめ
(1)【3歳】知っておきたい3歳の発達段階
第一反抗期
3歳前後は第一反抗期と呼ばれる時期。よく「イヤイヤ期」と言われる段階です。自我の芽生え、成長により「なんでも自分でやりたい、決めたい」と思うように。自立への大切な一歩ではありますが、他者から指示されたことにことごとく反発するなど、親を悩ませるようにもなります。
ものごとへの好奇心が旺盛に
知能の発達により、ものごとへ関心が高まります。全身や手先の運動能力、言語能力も発達して、できることも増加。興味があることには自ら手を伸ばし、積極的に取り組むようになっていきます。
つまりは、いろいろと自分でやってみたいけれど、人の言うことは聞きたくない。そんな成長段階にあるのが3歳児なのです。
(2)【3歳】切り替えが苦手な理由
目の前のことに夢中になり、先を考えられない
ものごとへの興味関心が高まる3歳児。夢中になると「もうすぐご飯だからやめよう」などとは考えず、その世界に入り込んでしまいます。一方で、自分で先々の見通しを立てて行動するにはほど遠いため、他者が何と言おうと自分の納得するまでやろうとしてしまうのです。
気持ちの表現、コントロールが未熟
3歳前後の子どもは言語能力が高まっているとはいえ、気持ちを詳細に言葉で表現するにはまだ不十分。「もっと遊びたい」「やめたくない」といった思いをうまく伝えられずに不満を抱え、その結果怒ったり泣いたりという行動になってしまうこともあります。
また、一度感情が爆発してしまうと、そのネガティブな状態からうまく抜け出せずに、いつまでもぐずってしまうことも。
やりたくないことへの拒否
大人もやりたくないこと、苦手なことには腰が重くなりますが、子どもはもっと正直です。
「お風呂が嫌い」「まだ寝たくない」「食に興味がない」
こういった自分が望まないことに対しては、必要と分かりつつも積極的に取り組めず、なかなか切り替えができないことも。もともとやりたくないので、厳しく叱ると一層反抗的になってしまうかもしれません。
急な場面展開が苦手
急に指示されたり予期せぬ予定が入ったりすると強い拒否感を示し、行動を渋る子どももいます。そうした子どもたちは、想定外やルーティン以外のことが苦手な性質。成長とともに自分で克服していきますが、そのストレスと不安を理解して、予告をするなど工夫が必要です。
発達に問題がある場合も
自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害により、切り替えが苦手という子どももいます。ASDやADHDにおいては、こだわりが強い、感情がうまくコントロールできない、先の見通しをつけるのが苦手、などの特徴があり、それにより場面ごとの切り替えが難しくなっているのかもしれません。発達障害とはっきり言いきれない“グレーゾーン”の子どもも少なくなく、同様の傾向がみられることも。
いずれにしても3歳では個性か障害かの見分けがつきにくいもの。心配であれば、一人で悩むことなく専門医や地域の発達支援の窓口で相談してみましょう。
(3)【3歳】切り替えが苦手な子どもへ周囲の大人ができること
スケジュールを立てる
あらかじめ何をやるかを教えておくと、子どももある程度心構えができます。朝の準備であれば、「顔を洗って、ご飯を食べたら、歯磨きをするよ」などと、順を追って伝えてあげましょう。一度で覚えることは難しいので、ルーティンになるまで根気よく教えてあげることが必要です。
子どもによっては、絵で示したほうが理解しやすい場合もあります。やることをわかりやすいイラストにして目につくところに貼っておくといいでしょう。
あらかじめ切り替えやすい状態にしておく
もうすぐ夕飯の時間というタイミングで、子どもの大好きなおもちゃを与えたらどうなるでしょうか。当然、なかなか遊びを切り上げることができなくなります。切り替えをスムーズにさせたいのであれば、大前提として切り替えにくい状況をなるべく作らないように心がけましょう。
急いで買い物を済ませたいならお菓子コーナーは通らない、子どもが眠たい時間帯にやることを詰め込まないなど。切り替えられずにぐずるのはどういうタイミングか、何がきっかけかを改めて見直して、できるだけその要素を取り除くようにします。
予告の声掛けをする
突然「はい、終わりね」と言われてすっとやめる3歳児は少ないでしょう。大人でもそうですが、予期していないことを言われると心の準備ができず、ストレスを感じてしまいます。
そこで大切なのは“予告”です。18時にお風呂に入れたいのであれば、15分前くらいから声掛けをします。
「長い針が12になったら遊ぶのは終わりね。ママとお風呂に行こう」
このように、いつ終わるのか、終わったら次は何をするのかを子どもにわかりやすく伝えましょう。そうすれば、子どもの中で心構えができます。
「この積み木ができあがったら」「この塗り絵が終わったら」など、子どもの遊びの様子を見てきりがいいところを切り替えのタイミングにするのもいいでしょう。場合によっては、5分前などに再度「あと少しでお風呂だよ」と声掛けをしても。
時間になったら、「もうお風呂の時間だから終わろうか」と優しく声掛けします。「18時までって言ったでしょ!」と高圧的になるのは逆効果。子どもの反発を招いてしまいます。まだ遊びたいようであれば、「どこまでやったらおしまいにする?」と聞いて、子ども自身に切り替えのタイミングを決めさせるといいでしょう。
切り替えのタイミングやその先が見える工夫をする
さらに切り替えのタイミングが分かりやすくなるよう、タイマーやスマートスピーカーなどのツールを使うという人もいます。まずは、あらかじめ
「あと〇分、タイマーがなったら遊びはおしまいね」
などと伝えておきます。タイマーの音が合図となり、すんなりとやめてくれる子どももいるようです。
また、次の行動があまり子どもにとってやりたくないことの場合、その先の楽しい予定を示してみてもいいでしょう。
「お片付けが終わったらおやつにしようか」
「おうちに帰ったら大好きなロボットで遊ぼう」
といったように、先に好きなことが待っているとわかると切り替えやすくなります。
子どもの視点になり、共感してから伝える
遊びに夢中になっている子どもは、いきなり「帰るよ」「片付けなさい」などと一方的に言われたら反発を覚えるのも当然でしょう。親に必要なのはまず子どもの視点になること。
「パズル、難しいけれどここまでできたんだね!すごい」
「お姫さまの絵、キレイに描けているね」
など、子どもの気持ちに寄り添って声を掛けます。その上で、「もうすぐご飯だから片付けるよ。このすてきな絵はご飯のあとに続きを描こうね!」などと声をかけると、子どもも自分の気持ちを分かってもらえている、と前向きな気持ちになれます。
クールダウンの時間をとる
気持ちを切り替えられずにかんしゃくを起こしたり、泣いて怒ったりと興奮しているようであれば、クールダウンの時間を取ることも有効です。「タイムアウト法」ともいわれる方法で、少し離れた静かな場所に座らせて、子どもの気持ちが落ち着くまでは構わないようにします。
これは突然行うのではなく、事前に「やめようという約束を守れなかったら、いったん一人で座って落ち着くようにしようね」と伝えておくことが必要です。実行する際には放置するのではなく、目の届く安全な場所を選びます。そしてクールダウン中は親が見つめたり話しかけたりしないこと。その時間は年齢×1分、つまり3歳なら3分程度とします。
落ち着くことができたらほめて、次の行動に移りましょう。
切り替えができたときは思い切り褒める
きちんと気持ちを切り替えて行動に移れたときには、当たり前と思わず思い切り褒めてあげましょう。「自分で切り替えられた」という成功体験が、その次の行動へとつながります。
(4)切り替えが苦手な3歳児への言葉がけ5選
1. 時計の長い針が○になったら
切り替えには予告が大切です。まだ時計が読めない子どもには、「時計の長い針が一番上になったらね」など、わかりやすく区切りの時間を伝えてあげましょう。
2. あと○回したら終わろうね
約束の時間の前後になってもどうしても遊びたいようであれば、子どもの「もう少し」という気持ちをくみ取って少し譲ってあげましょう。ただ、無制限ではなく、「あと3回すべり台をすべったら帰るよ」「ブロックでこのおうちができたらおしまいね」など具体的な回数や目安を伝えて、子どもにもOKかを聞きます。そうすれば、譲ってもらったということも含めて納得して切り替えることができるでしょう。
3. 一緒に片付けよう
おもちゃの片づけなど子どもが乗り気ではないことへ誘導する場合、親が「~しなさい」といっても一人ではやりたがらないことも。そうした場合は、「ママと一緒に片付けようね」など一緒にやることを伝えると、子どもも行動しやすくなります。
「自分が使ったものは自分で」というのはもちろんですが、まだ3歳児では練習中と考えて、まずは子どもが動けるように一緒に取り組んであげましょう。
4. もっと遊びたいんだね
切り替えをぐずる子どもに対して、親が急いでいるときなどはイライラして「●時までっていったでしょ!」「早くしなさい」と叱ってしまうこともあるでしょう。しかし、それでは子どもの行動を遅くするだけです。まずは、
「まだ遊びたいんだね」「このおうち、もっと作りたかったの?」
と気持ちに寄り添った声掛けをしてあげることが必要です。子どもなりの思いを聞いてあげたうえで代替案や次の行動の提案をすれば、「わかってもらえた」と次の行動へ気持ちを向けることができます。
5. 自分で終われたね
時間になって自分で片付けを始めるなど次の行動へ移れたなら、「自分で片付けられたね」「ちゃんと約束のお時間に終われたね」と、その行動を認める声掛けをしてあげましょう。気持ちの切り替えを勉強中の子どもにとっては、親がきちんと見てくれているということが「次もやろう」というモチベーションにつながるのです。
(5)まとめ
気持ちを切り替えることも大切ですが、親が神経質になりすぎないことも大切。子どもが真剣になっていて、あとの時間が調整できるなら待つことも検討を。そうして子どもの好奇心を育てつつ、少しずつ切り替えを身につけていくようにしましょう。
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